コラム

不登校の中学生と保護者が共に乗り越える高校進学のステップ

不登校の中学生と保護者が共に乗り越える高校進学のステップ 公開日:

保護者の方々には、子どもが中学の最後の年を不登校で過ごしていると聞いて、不安と焦りが増していることでしょう。
この状況は、ご家庭にとって非常に心配なものです。
親として子どもの将来について心配するのは、自然なことです。

ただ、その不安が増すことが、場合によっては子どもにプレッシャーを与え、さらに困難な状況を引き起こす原因となることも考えられます。
不登校には様々な背景があり、個々の事情によって異なります。

そこで私たちは、全ての子たちに役立つ可能性のある具体的な方法を紹介しています。
これをお役立ていただければ幸いです。

子どもと共に歩む

子どもと共に歩む

何よりもまず重要なのは、保護者が子どもと同じペースで歩むことです。

子どもが不登校である場合、その背景には様々な理由があります。
もし子どもが自ら進んで高校進学を目指しているなら、受験準備を順調に進めることも可能です。

ただ、多くの場合は「受験など考えられない」という状況が一般的です。
そのため、保護者はまず子どもと同じ視点に立つことが求められます。

焦りを避ける受験準備

保護者にとって最も重要なのは、受験に対する焦りを抑えることです。

高校受験の日が近づくにつれて、不安が増し、「少なくとも高校には進学させたい」という思いが強くなることは理解できます。
しかしこれは強調しますが、そうした焦りが子どもには逆効果となることが多いです。

不登校の背後には、子ども自身も理解できない複雑な理由が存在することが少なくありません。
このような状況で、保護者の受験に対するプレッシャーがお子さんに伝わると、問題がさらに悪化することもあり得ます。

確かに「受験」という明確な期限が存在するため、対応は難しいですが、まずは子どもに必要なのは時間と安心感を提供することです。

時間を共有する

次に重要なのは、子どもに寄り添い、彼らの話をじっくりと聞くことです。
特にこの時期には、受験に関する話題は避けた方が賢明かもしれません。

コミュニケーションを取ること自体が難しい場合もあるでしょう。
そうした時は、単に安心できる空間を提供し、時間をかけて支えるだけで大きな意味があります。
子どもには思いのほか多くの時間と安心感が必要とされることもありますし、進展が見られたかと思えば一時的に後退することもあります。

時には「わがままや甘え」が顕著になるかもしれませんが、それも彼らの感情の一部です。
保護者の皆さんにとってそれを受け止めるのは容易ではないかもしれません。
それでも、こうした時間を経験した子どもは、将来自分の道を歩む上で自立しやすくなる可能性が高まります。

子どもと一緒に進路を考える

子どもが少し安定した様子を見せたら、進路や高校受験について話し合うのが良いでしょう。
不登校の状況はさまざまですが、多くの場合、1〜2ヶ月経過すると子どもの心理状態が少し落ち着くことがあります(長引く可能性があるため、子どもの状況に応じて対応が必要です)。

特に、中学3年生の秋や、家庭訪問、懇談会、通知表の受け取りなどがあるタイミングは、進路について話しやすい機会となります。
焦ることなく、これらの機会を活用することが重要です。

子どもたちの中には「高校へ進学したい」と考えている者も多くいます。
その意志を尊重し、支えてあげてください。
また、「なぜ高校に進学したいのか」という明確な目的を持つことが、受験や高校生活の充実につながります。
進学の意欲が見られたら、一緒に志望校を検討していくことが次のステップです。

高校進学の選択肢|種類別の理解と対策

不登校の状態からの高校受験を目指す際、重要なのは高校の種類とその特性を理解することからスタートします。
各高校は受験方法や入学後の教育体系に違いがあるため、それぞれの高校について詳しく知ることが大切です。
特に、不登校の生徒を歓迎する高校も存在するため、そのような学校の情報を集めることから始めましょう。

全日制高校

全日制高校は、週の大部分を使って日中に授業が行われる、最も一般的な高校の形態です。
この形態では、通常、1年生から3年生までの学年制が採用されており、3年間のプログラムで卒業を目指します。
「中学時代は不登校だったが、高校では全日制で学びたい」と考える生徒も多いでしょう。
もし中学で学業にブランクがあっても、全日制の高校への進学は十分に可能です。

公立高校【全日制】の受験における評価基準と対策

全日制の公立高校では、一般的に「学力試験と調査書」による評価で合格が決定されます。
高校によっては、調査書の影響度が異なり、多くの学校で学力試験と調査書の比重が7:3や6:4で配分されています。
調査書では、成績(内申点)の他に出席状況も重要視され、多くの公立高校では欠席日数が多い生徒が審議対象になることが一般的です。
欠席日数が基準を超えると、合格の見込みが低くなる可能性があります。
以下に、不登校の生徒が全日制の公立高校に合格するための戦略を紹介します。

・「不登校枠」の活用
一部の都道府県では、「不登校枠」と称される制度を導入しており、欠席の事情を「自己申告書」に記載して提出することで、特別な配慮を受けられる場合があります。
この制度は、不登校の生徒が通常の枠組みで不利になることを防ぐためのものですが、新たな合格枠が設けられるわけではないため、生徒の不利益が少なくなるだけである点に注意が必要です。
地域ごとの制度内容を確認し、適切に利用しましょう。

・調査書の「特記事項」欄を利用する

調査書には「特記事項」というセクションが設けられており、欠席日数が多い理由を説明するための記載が可能です。
例えば、「中学校の後期には登校が増え、高校では通常通り出席できる見込み」や「怪我など特別な事情で欠席が多かった」などの説明が含まれることがあります。
この記載は中学校の先生によって決定されるため、早めに相談し、理解を求めることが重要です。

私立高校の入試方法

公立高校と異なり、多くの私立高校では調査書の重要性が相対的に低いとされています。
ただし、推薦入試を利用する際は出席日数が重視されることもありますので注意が必要です。

私立高校は学校によって募集要項が異なるため、不登校の生徒でも受験に有利な学校選びが可能です。
特に「オープン入試」という制度は、調査書の内申点をほとんど参考にせず、学力試験の成績のみで合否を判断する方法です。
さらに、オープン入試とは異なるものの、学力試験を中心に評価する私立高校も多く存在します。
これにより、不登校の背景を持つ生徒でも受験に臨みやすい環境が整っています。

通信制高校の特徴と受験方法

不登校経験のある生徒に人気が高いのが、通信制高校です。
通信制高校の最大の特徴は、日常的な登校義務がなく、「スクーリング」と称される特定の日にのみ学校へ行くスタイルです。
教育方法としては、学校から提供される教材やオンラインプラットフォームを利用して、必要な単位を獲得する形式をとっています。
多くの場合、学習内容が理解しやすい構成であり、3年制の通常の高校と異なり、必要な単位が早期に完了すれば3年未満での卒業も可能です。

入学選考に関しては、一般的な学力試験を行わず、書類審査と面接で学生を選ぶ方法が主流です。
通信制高校は不登校の経験がある生徒を積極的に受け入れる方針を持つ学校が多く、不登校が受験に際して不利になることはほとんどありません。
このため、不登校経験者にとって非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。

定時制高校の選択肢

定時制高校は、不登校の経験がある生徒にも適した教育の選択肢です。
定時制高校は通信制高校と異なり、毎日の登校が必要ですが、授業は主に夕方から夜にかけて行われ、1日の授業時間は約4時間と短めです。
このスケジュールは、不登校の生徒が学校生活に徐々に適応するのに役立ち、学習への負担も少なくします。
教育内容はアクセスしやすく設計されている学校が多いため、学びやすい環境が提供されます。
卒業までの期間は学校によって3年から4年の範囲で異なります。

入学選考は主に「学力試験と面接」で行われますが、多くの定時制高校では学力試験の成績を重く見ることは少なく、全体の人柄や適応能力が評価される傾向にあります。
このため、不登校の生徒でも受け入れられやすく、再び学業を始めるにあたって良い選択肢となるでしょう。

まとめ

不登校の状況に直面している保護者の方々にとって、子どもの進路や高校受験は大きな悩みの一つです。
しかし、ここで最も大切なのは、お子さんが抱える不安やプレッシャーを増大させず、共感と理解をもって接することです。
お子さん一人ひとりのペースや心の準備を尊重し、焦らずじっくりと寄り添うことが重要です。
さらに、多様な教育形態を理解し、全日制、定時制、通信制といったさまざまな高校の中から、お子さんに最適な環境を選ぶサポートをすることも、保護者に求められる役割です。
不登校を経験しているからこそ、柔軟な対応が可能な学校選びが、お子さんの未来を開く鍵となるでしょう。
このような親のサポートが、子どもが自分らしく成長し、学び続けるための力となります。

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教務代表 山田 祐大

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